The banana jam jar lid could not be opened, so mom switched to another banana jam jar and asked dad to open the lid on that one, we all ate crepe with this banana jam on it. ―Kazuya Nakayama
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バナナジャムの瓶の蓋が開かなかったので、お母さんが別のバナナジャムに替えてくれて、お父さんに瓶の蓋を開けてもらって、みんなでクレープにバナナジャムをつけて食べました。
中山和也
美術作家、中山和也は2022年の8、9月を、ある古物商と同行し、ヨーロッパに滞在しました。バンにすし詰めになりながら都市を移動し、フランスほか各地でのマーケットやリサイクルショップ、ベンダーからの買付に立会い、そして古物が集積した状況――家具やカトラリーや置物や洋服らが一同に並べられたその様子――に、「大きな家」を見ました。
本書は、買い付けの先々に居合わせた人らを撮影したポートレート集です。「大きな家」にいた彼らに、購入した古物を使って、自宅のような振る舞いを演じるよう依頼します。
しかし、当然うまくいきません。買い物中の、あるいは仕事中の彼らにとって、東洋人からの妙で、言語的な隔たりを感じるお願いに戸惑いを示し、度々、緊張や拒絶が生まれました。そうした感情の現れとして、本書にはブレを起こしている写真や、緊張の色が強く出ている表情があります。
「あなたの写真を撮りたいのですが、自宅のように振る舞ってほしく……」と伝え、居心地の悪いのは、中山自身にとっても同じです。ところが撮影を終え、お互いにとって災難な状況からの復帰によって、彼は現地の人々と驚くほど柔らかい表情で打ち解けることができたそうです。
本書は、繰り返された緊張と緩和の途中、緩和が訪れる少し前の瞬間の作品集と言えるかもしれません。アート、あるいは作品制作の名の元に行われた、いささか歪なコミュニケーションでもってして当地と特別な関係を結んだ中山の、まだ、にがい瞬間のアルバムでもあります。
中山和也
千葉県生まれ。アジア、ヨーロッパを拠点に活動。あらかじめ作品を用意することはせず、今ここで起きていることに焦点を当て、読み取った感覚を直截に視覚化する。展示に立ち現れるのは、ありえない状況での恋人たちの予期せぬ出会いや、遅刻、森の斜面に転がる夏みかんなど。状況に対して初動を起こし、そうしてそこに起こる動作や結果を作品として提示する。
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